令和2年(2020)第1節 病理標本作製料

目次

通則

1 病理標本作製に当たって、3臓器以上の標本作製を行った場合は、3臓器を限度として算定する。

2 リンパ節については、所属リンパ節ごとに1臓器として数えるが、複数の所属リンパ節が1臓器について存在する場合は、当該複数の所属リンパ節を1臓器として数える。

N000 病理組織標本作製

1 組織切片によるもの(1臓器につき) 860点

2 セルブロック法によるもの(1部位につき) 860点

通知
(1) 「1」の「組織切片によるもの」について、次に掲げるものは、各区分ごとに1臓器として算定する。
ア 気管支及び肺臓
イ 食道
ウ 胃及び十二指腸
エ 小腸
オ 盲腸
カ 上行結腸、横行結腸及び下行結腸
キ S状結腸
ク 直腸
ケ 子宮体部及び子宮頸部

(2) 「2」の「セルブロック法によるもの」について、同一又は近接した部位より同時に数検体を採取して標本作製を行った場合であっても、1回として算定する。

(3) 病理組織標本作製において、1臓器又は1部位から多数のブロック、標本等を作製した場合であっても、1臓器又は1部位の標本作製として算定する。

(4) 病理組織標本作製において、悪性腫瘍がある臓器又はその疑いがある臓器から多数のブロックを作製し、又は連続切片標本を作製した場合であっても、所定点数のみ算定する。

(5) 当該標本作製において、ヘリコバクター・ピロリ感染診断を目的に行う場合の保険診療上の取扱いについては、「ヘリコバクター・ピロリ感染の診断及び治療に関する取扱いについて」(平成 12 年 10 月 31 日保険発第 180 号)に即して行うこと。

(6) 「2」の「セルブロック法によるもの」は、悪性中皮腫を疑う患者又は組織切片を検体とした病理組織標本作製が実施困難な肺悪性腫瘍、胃癌、大腸癌、卵巣癌若しくは悪性リンパ腫を疑う患者に対して、穿刺吸引等により採取した検体を用いてセルブロック法により標本作製した場合に算定する。なお、肺悪性腫瘍、胃癌、大腸癌、卵巣癌又は悪性リンパ腫を疑う患者に対して実施した場合には、組織切片を検体とした病理組織標本作製が実施困難である医学的な理由を診療録及び診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。

N001 電子顕微鏡病理組織標本作製(1臓器につき)2,000点

通知
(1) 電子顕微鏡病理組織標本作製は、腎組織、内分泌臓器の機能性腫瘍(甲状腺腫を除く。)、異所性ホルモン産生腫瘍、軟部組織悪性腫瘍、ゴーシェ病等の脂質蓄積症、多糖体蓄積症等に対する生検及び心筋症に対する心筋生検の場合において、電子顕微鏡による病理診断のための病理組織標本を作製した場合に算定できる。

(2) 電子顕微鏡病理組織標本作製、区分番号「N000」病理組織標本作製、区分番号「N002」免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製のうち、いずれを算定した場合であっても、他の2つの項目を合わせて算定することができる。

N002 免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製

1 エストロジェンレセプター 720点

2 プロジェステロンレセプター 690点

3 HER2タンパク 690点

4 EGFRタンパク 690点

5 CCR4タンパク 10,000点

6 ALK融合タンパク 2,700点

7 CD30 400点

8 その他(1臓器につき) 400点


1 1及び2の病理組織標本作製を同一月に実施した場合は、180点を主たる病理組織標本作製の所定点数に加算する。

2 8について、確定診断のために4種類以上の抗体を用いた免疫染色が必要な患1者に対して、標本作製を実施した場合には、1,200点を所定点数に加算する。

通知
(1) 免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製は、病理組織標本を作製するにあたり免疫染色を行った場合に、方法(蛍光抗体法又は酵素抗体法)又は試薬の種類にかかわらず、1臓器につき1回のみ算定する。

(2) 免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製、区分番号「N000」病理組織標本作製又は区分番号「N001」電子顕微鏡病理組織標本作製のうち、いずれを算定した場合であっても、他の2つの項目を合わせて算定することができる。

(3) 「1」のエストロジェンレセプターの免疫染色と「2」のプロジェステロンレセプターの免疫染色を同一月に実施した場合は、いずれかの主たる病理組織標本作製の所定点数及び注に規定する加算のみを算定する。

(4) 「3」のHER2タンパクは、半定量法又はEIA法(酵素免疫測定法)による病理標本作製を行った場合に限り算定する。

(5) 「5」CCR4タンパク及び区分番号「D006-10」CCR4タンパク(フローサイトメトリー法)を同一の目的で実施した場合は、原則として主たるもののみ算定する。ただし、医学的な必要性がある場合には、併せて実施した場合であっても、いずれの点数も算定できる。なお、この場合においては、診療報酬明細書の摘要欄にその理由及び医学的必要性を記載すること。

(6) 「6」のALK融合タンパクは、非小細胞肺癌患者に対して、ALK阻害剤の投与の適応を判断することを目的として、ブリッジ試薬を用いた免疫組織染色法により病理標本作製を行った場合に、当該薬剤の投与方針の決定までの間に1回を限度として算定する。

(7) 「7」のCD30は、HQ リンカーを用いた免疫組織化学染色法により、悪性リンパ腫の診断補助を目的に実施した場合に算定する。

(8) 「注2」に規定する「確定診断のために4種類以上の抗体を用いた免疫染色が必要な患者」とは、原発不明癌、原発性脳腫瘍、悪性リンパ腫、悪性中皮腫、肺悪性腫瘍(腺癌、扁平上皮癌)、消化管間質腫瘍(GIST)、慢性腎炎、内分泌腫瘍、軟部腫瘍、皮膚の血管炎、水疱症(天疱瘡、類天疱瘡等)、悪性黒色腫、筋ジストロフィー又は筋炎が疑われる患者を指す。これらの疾患が疑われる患者であっても3種類以下の抗体で免疫染色を行った場合は、当該加算は算定できない。

(9) 肺悪性腫瘍(腺癌、扁平上皮癌)が疑われる患者に対して「注2」の加算を算定する場合は、腫瘍が未分化であった場合等HE染色では腺癌又は扁平上皮癌の診断が困難な患者に限り算定することとし、その医学的根拠を診療報酬明細書の摘要欄に詳細に記載すること。なお、次に掲げるいずれかの項目を既に算定している場合には、当該加算は算定できない。
ア 「D004-2」悪性腫瘍組織検査の「1」悪性腫瘍遺伝子検査の「イ」処理が容易なものの「(1)」医薬品の適応判定の補助等に用いるもの(肺癌におけるEGFR遺伝子検査、ROS1融合遺伝子検査又はALK融合遺伝子検査に限る。)
イ 「D004-2」悪性腫瘍組織検査の「1」悪性腫瘍遺伝子検査の「ロ」処理が複雑なもの(肺癌におけるBRAF遺伝子検査に限る。)
ウ 区分番号「N005-2」ALK融合遺伝子標本作製

(10) セルブロック法による病理組織標本に対する免疫染色については、悪性中皮腫を疑う患者又は組織切片を検体とした病理組織標本作製が実施困難な肺悪性腫瘍、胃癌、大腸癌、卵巣癌若しくは悪性リンパ腫を疑う患者に対して実施した場合に算定する。なお、肺悪性腫瘍、胃癌、大腸癌、卵巣癌又は悪性リンパ腫を疑う患者に対して実施した場合には、組織切片を検体とした病理組織標本作製が実施困難である医学的な理由を診療録及び診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。

N003 術中迅速病理組織標本作製(1手術につき) 1,990点

通知
術中迅速病理組織標本作製は、手術の途中において迅速凍結切片等による標本作製及び鏡検を完了した場合において、1手術につき1回算定する。なお、摘出した臓器について、術後に再確認のため精密な病理組織標本作製を行った場合は、区分番号「N000」病理組織標本作製の所定点数を別に算定する。

N003-2 迅速細胞診

1 手術中の場合(1手術につき) 450点

2 検査中の場合(1検査につき) 450点

通知
迅速細胞診は、手術、気管支鏡検査(超音波気管支鏡下穿刺吸引生検法の実施時に限る。)又は内視鏡検査(膵癌又は胃粘膜下腫瘍が疑われる患者に対して超音波内視鏡下穿刺吸引生検法の実施時に限る。)の途中において腹水及び胸水等の体腔液又はリンパ節穿刺液を検体として標本作製及び鏡検を完了した場合において、1手術又は1検査につき1回算定する。

N004 細胞診(1部位につき)

1 婦人科材料等によるもの 150点

2 穿刺吸引細胞診、体腔洗浄等によるもの 190点


1 1について、固定保存液に回収した検体から標本を作製して、診断を行った場合には、婦人科材料等液状化検体細胞診加算として、36点を所定点数に加算する。

2 2について、過去に穿刺し又は採取し、固定保存液に回収した検体から標本を作製して、診断を行った場合には、液状化検体細胞診加算として、85点を所定点数に加算する。

通知
(1) 腟脂膏顕微鏡標本作製、胃液、腹腔穿刺液等の癌細胞標本作製及び眼科プロヴァツェク小体標本作製並びに天疱瘡又はヘルペスウイルス感染症における Tzanck 細胞の標本作製は、細胞診により算定する。

(2) 同一又は近接した部位より同時に数検体を採取して標本作製を行った場合であっても、1回として算定する。

(3) 「2」の「穿刺吸引細胞診、体腔洗浄等」とは、喀痰細胞診、気管支洗浄細胞診、体腔液細胞診、体腔洗浄細胞診、体腔臓器擦過細胞診及び髄液細胞診等を指す。

(4) 「注1」の婦人科材料等液状化検体細胞診加算は、採取と同時に行った場合に算定できる。なお、過去に穿刺し又は採取し、固定保存液に回収した検体から標本を作製し診断を行った場合には算定できない。

(5) 「注2」の液状化検体細胞診加算は、採取と同時に作製された標本に基づいた診断の結果、再検が必要と判断され、固定保存液に回収した検体から再度標本を作製し、診断を行った場合に限り算定できる。採取と同時に行った場合は算定できない。

N005 HER2遺伝子標本作製

1 単独の場合 2,700点

2 区分番号N002に掲げる免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製の3による病理標本作製を併せて行った場合 3,050点

通知
(1) HER2遺伝子標本作製は、抗HER2ヒト化モノクローナル抗体抗悪性腫瘍剤の投与の適応を判断することを目的として、FISH法、SISH法又はCISH法により遺伝子増幅標本作製を行った場合に、当該抗悪性腫瘍剤の投与方針の決定までの間に1回を限度として算定する。

(2) 本標本作製と区分番号「N002」免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製の「3」を同一の目的で実施した場合は、本区分の「2」により算定する。

N005-2 ALK融合遺伝子標本作製6,520点

通知
(1) ALK融合遺伝子標本作製は、ALK阻害剤の投与の適応を判断することを目的として、FISH法により遺伝子標本作製を行った場合に、当該薬剤の投与方針の決定までの間に1回を限度として算定する。

N005-3 PD-L1タンパク免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製2,700点

通知
PD-L1タンパク免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製は、抗PD-1抗体抗悪性腫瘍剤又は抗PD-L1抗体抗悪性腫瘍剤の投与の適応を判断することを目的として、免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製を行った場合に、当該抗悪性腫瘍剤の投与方針の決定までの間に1回を限度として算定する。